皇帝ナポレオン一世のドラマ「キング オブ キングス」鑑賞
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これも隠れた傑作だった。
ナポレオン一世を描いたフランスの2002年のテレビドラマで原題は、そのまんま「ナポレオン」。
日本版、わざわざ誰のことか分かりにくく改題せんでも良いのに。
ナポレオン一世がヨーロッパを瞬殺出来たのはフランス革命の後に国民からの支持を得て徴兵制度を発案し、大砲、火薬を使った戦術が当時では画期的だったからだよな。
物語はナポレオン一世に二人の部下、タレーラン宰相とフーシェ警察長官を軸に進む。
配役が絶妙で一番光っていたのはジョン・マルコビッチ演じるフランスの宰相タレーラン。
タレーランと言えば、時勢を見計らい冷徹に主君を裏切って世を渡る策士。
イメージ的にタランティーノ監督の「イングロリアル バスターズ」のクリストフ・ヴァルツが演じたハンス・ランダ親衛隊大佐だな。
ハンス・ランダは裏切りに失敗したが、あれはタレーランの真似か?最後の裏取引は(笑)
あとはタレーランは片足が悪く杖をついて歩くのがナチスのゲッベルス宣伝大臣の不気味さと人間性の雰囲気が似ている。
そんなタレーランを上手く演じたマルコビッチ。
とろ~んと囁くような冷めた、いかにも貴族なボソボソ低血圧な発声(笑)
明らかに腹に一物あり、な感じ(笑)
不気味で不穏な静けさを湛えていて、いかにも策士タレーランだった。
ジョン・マルコビッチの絶妙さだけで
“隠れた傑作“
と言える位、最近観た映画の中でベストキャストだった。
警察長官ジョゼフ・フーシェ役がジェラール・ドパルドュー。これも不気味だった。
タレーラン、フーシェと不気味で腹に一物ある部下に囲まれた皇帝ナポレオン一世役がクリスチャン・クラヴィエというフランスのコメディアン。
コメディアンなんだこの人、皇帝にまで登り詰め傲岸不遜な演技で、本職がコメディアンには全く見えなかった。
しかしナポレオン役だから小太りで、他の俳優が皆、高身長の中、頭一つ小さい。
ナポレオンが小柄だったのを表現していた。
小柄でもナポレオンはローマ教皇をフランスに呼びつけ戴冠式で正式に皇帝にまで登り詰めた男。
気の高ぶった傲岸不遜な演技で、コメディアンとは思えない雰囲気。
ナポレオン一世はコルシカ島の貧乏貴族からフランス革命を利用して成り上がり一時的とは言えヨーロッパ大陸を制覇した。
そんな人物、カール大帝かナポレオン一世しかいない。
あ、ヒトラーも?(苦笑)
ナポレオンの正妻ジョゼフィーヌ役はイザベラ・ロッセリーニ。髪型を肖像画と良く似せていた。
ナポレオンの愛人になるポーランド人のヴァレフスキ伯爵夫人役の女優が高身長でスラリとしたスーパーモデルのような金髪美人だった。
しかも絶世の美女でありながら人格者でもあり、ポーランドという列強に蹂躙されてばかりの悲劇の国を象徴するような描き方だった。
第二次世界大戦もナチスとソ連に二分割で侵略され国の機能を失ったが、カティンの森事件みたいなスターリンの陰険さの犠牲になり、連合国側でありながら、敵はナチスでもソ連でもあるという板挟みに合う。
ヨーロッパ大陸とロシアの真ん中にあるポーランドという国ならではの悲劇だ。
正妻ジョゼフィーヌなんて貴族の持つ傲慢さと夫ナポレオンへの裏切りの片鱗を持つかと思えば、ナポレオンの浮気や子を成さなかった為の離婚話には嫉妬に狂う、感情的で俗物的な描かれ方だった。
だから、このポーランドの愛人が唯一、ナポレオン一世を本当に純粋に愛した人間か。
哀しき美しき国、ポーランド(泣)こんなポーランドの象徴だった。
救いとしては、この愛人との子供は外交官としてわりと長生きした。
後、正妻になるオーストリア皇女マリールイーズとのナポレオン二世は父親の失脚で日陰暮らしで二十歳位で亡くなる。
日本の幕末にも関わるナポレオン三世はナポレオンの弟(兄ナポレオン一世のおかげでオランダ国王になった)の息子。
このナポレオン三世もパッとしない人物で小ナポレオンと呼ばれ、プロイセンとフランスの戦争、普仏戦争で失脚。
1805年12月2日のアウステルリッツの戦いでナポレオンがロシア帝国、オーストリア帝国の連合に(三つの帝国の戦いから三帝会戦とも呼ばれる)勝利し、ロシア皇帝アレキサンドル一世とティルジット講和条約で和解、欧州全領土を制覇する。
アレキサンドル一世の役がトビー・スティーブンス。
実の母親の大女優マギー・スミスに、よく似ている金髪のイケメン俳優。
このアレキサンドル一世もタレーランのマルコビッチ同様、皇帝の威厳たっぷり気位が高い高貴でシニカルな表情が腹に一物あり(笑)。
しかも高身長の金髪の美青年皇帝というのがニクい。
そして、金髪の美青年皇帝の放つ嫌な予感で、ここからナポレオンが滑り落ちて行く。
まず、欧州全領土を制覇した皇帝ナポレオンは大陸封鎖令で産業革命で経済的に成功したイギリスとヨーロッパの貿易を独占する。
しかし、ナポレオンは7人兄弟の三男だが、突出して優秀なのは自分だけで他はそうじゃなかった。
凡庸な兄弟に侵略した国の国王を任せたのが次々とアダになる。
スペイン国王を任せた兄貴が民衆に受け入れられず、スペイン独立運動が勃発。
これが、せっかく和解したロシア皇帝アレキサンドル一世に知られ、形成は一変する。
大陸封鎖令を無視し、ロシア帝国はイギリスとの貿易をナポレオンに無断で再開する。
裏切られた皇帝ナポレオン、止めときゃ良いのに、制裁のロシア遠征に。
ロシア遠征は「戦争と平和」でも色濃く描いていたが、ヒトラーがナポレオンの失敗に全く学ばなかったのが、よく分かる。
ロシア軍のやり方は軍隊をわざと退却させ、敵を進軍させ奥地にあるモスクワまで誘き寄せる罠を仕掛ける。
そしてモスクワを自ら焼き払う。
パイプライン、首都機能を全滅させ、奥地まで進軍した敵を、あとは自然の将軍=冬将軍に任せる。
極寒の冬を利用するロシアのお家芸だ。
ヒトラーってナポレオンとおんなじ罠にハマり失敗繰り返したんだ~同じ6月22日から対ロシア戦、始めてもなぁ、自爆(笑)
ロシア迄、国が寒いと人間が粘り強く陰湿なの学べよ(笑)
そしてロシア遠征に失敗、フランスは疲弊し、せっかくアウステルリッツの戦いで属国にしたオーストリアになめられてしまい、ここで登場するのがオーストリアの宰相メッテルニヒ。
タレーランも策士だが、メッテルニヒも凄腕(笑)。
ジュリアン・サンズが演じていて、この配役も嬉しい(笑)
またまたナポレオンより美しい高身長の俳優がナポレオンを見下し暗雲を匂わす。
メッテルニヒ宰相いわく
「アンタ、ロシア遠征、失敗して兵士も国費も失なったよね、もう賠償金払わなくていいよね、後、領土をオーストリアに返してよ。じゃないと対仏同盟組むよ。」
と、脅した(笑)
そして策士メッテルニヒの挑発に皇帝ナポレオン、まんまと引っ掛かる。
ナポレオンがロシア遠征の失敗を素直に受け止め、ここで止めときゃ良いのに、挑発に乗り、オーストリアとの宣戦布告に発展さす。
この時、オーストリア皇女マリー=ルイーズを正妻に迎え、皇太子まで授かったばかり。
愚かだ。
このドラマのナポレオンはすぐにカッとなる直情的な描き方だが、この時は私も観ながら、この判断が間違いだったな、と。
そして対仏同盟軍に敗戦しイタリア領エルバ島に追放。
追放と言ってもイタリアに近いエルバ島の領主扱いで宮廷は与えられ、貴族レベルの文化的に遊んで暮らしている描写だった。まあ、コルシカ島の貴族に元の木阿弥、と。
しかし、皇帝だったナポレオン、ただ遊んで暮らせる毎日じゃあ、まだ血が騒いで落ちつかない(笑)。
そこに、使者から情報が入る。
「今、フランスの国民はブルボン王朝の復活を嘆いています。また、皇帝に返り咲くチャンスです!。」
ちなみにロッド・スタイガーがナポレオンを演じた「ワーテルロー」という映画はこの辺から話が始まる。
ロッド・スタイガーのナポレオンの場合、初めから、かつての栄光は過去のもの、な、くたびれたオヤジだった。
くたびれたオヤジなナポレオンも味わいがあって良かったけど。
ワーテルローで悪あがき失敗。更に敗戦を喰らう訳だし。
ワーテルローで敗戦し、ナポレオン一世の軍事生命、終了。
1815年2月にエルバ島から脱出してから同年7月に終結「百日天下」。でした。
でも、明智光秀の三日天下よりは長いじゃないですか!(泣)
ナポレオンって結局、自分は軍事の天才だが兄弟が皆ヘタレな凡人だったのがアダになってるな。
親族というだけの凡人を侵略した国の王様に就け、周りの反感からほころび始めて自滅。
自分の当たり前が兄弟には無く機能しなかった。そんな描かれ方だったな。
エルバ島から脱出したことを条約違反とされ、ナポレオンは今度は南大西洋の絶海セントヘレナ島に流刑扱い。
今度は質素な暮らしの中、1821年5月、寂しく51歳で死んだ。セントヘレナ島には6年間、暮らしたんだな。
まだ、若い(泣)
ちなみに日本には戦国武将、宇喜多秀家つうのが関ヶ原の戦いに敗れ八丈島に流されたな。秀家は82歳まで生きた。
◆ナポレオンのポーランド人の愛人役、どっかで観たと思ったら「ヒトラー~最後の12日間~」でタイプライター役演じたアレクサンドラ・マリア・ララという女優だった。