「流転の王妃」観賞

 

流転の王妃 [DVD]

流転の王妃 [DVD]

  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: DVD
 

 

流転の王妃」観賞。


満州国皇帝、溥儀の実弟愛新覚羅溥傑に嫁いだ侯爵家の令嬢、嵯峨浩の自伝の映画化で主演は京マチ子


京マチ子小津安二郎監督の「浮草」のあばずれな旅芸人役が有名だが、こちらはそれとは対照的に侯爵家のお嬢様の喋り方、仕草、そして嫁ぎ先の中国語も披露している。


類似作品、ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」程、芸術性はないが、内容はより濃い。


始まりは関東軍からのほぼ命令的な縁談話を家族も含めて怪訝するが実際に溥傑とお見合いして、唐突に急変(笑)。
一人娘の急死も唐突でまったく悲劇的に見えなかった、予算のせい?監督はあの名女優、田中絹代なんだな。

そして結婚して満州で暮らすが皇帝の弟夫妻だというのに自家用車も用意しない関東軍
ラストエンペラー」でも関東軍の横暴さはかなり強調して描かれていたが、同じく匂わしている。

しかし夫の溥傑は優しく娘にも恵まれ幸せに暮らす。
真珠湾攻撃で太平洋戦争に入って東京大空襲まで、サラリと十数分。
日ソ不可侵条約があるソ連が参戦したと驚く迄またサラリと流し、ここからが波乱万丈。

 

まずソ連の対日参戦で満州国の首都新京はソ連軍に占領され皇帝一族は大栗子疎開する。
栗子にて玉音放送を聞き、敗戦を知った溥儀は満州国皇帝退位を宣言する。
溥傑と溥儀がまず日本へ亡命する為に飛行機で移動しようとするが奉天飛行場でソ連兵に捕縛されハバロフスクの収容所に入れられてしまう。
残された浩と娘、溥儀の妻、婉容らはソ連軍が迫る大栗子から更に臨江に逃れるも翌1946年1月に八路軍によって通化八路軍公安局に連行されてしまう。
その時、元満州国皇帝一族として見せしめにされ見物する中国人から罵倒と砂をかけられながら徒歩で公安局まで移動する。
そしてあの凄惨な通化事件に巻き込まれる。
もう1つ凄まじいのは「ラストエンペラー」でもあったが溥儀の妻、婉容の阿片中毒っぷり。
八路軍公安局といえ獄中並みの環境で阿片中毒に苦しむ婉容が生々しかった。


まだまだ凄惨な流転の日々は続き、ようやく引き揚げ船に乗り佐世保港へ到着。


ラストエンペラー」は芸術性重視で戦後の凄惨さはまったく描かず最後は急に文化大革命最中の北京に移り、故宮博物院と観光地となった元紫禁城で老人溥儀が昔を懐かしんで終わり、だった。
坂本龍一の名曲も含め芸術性だけは大成功な作品だったな。

こちらは終戦から引き揚げ船に乗る迄の2年間の壮絶な流転を入念に描いてくれている、それでも軽いんだろうな。