翻弄される国?、日本

フランス革命からナポレオンのフランス革命軍に対して第一次対仏大同盟が締結されるがナポレオンのフランス革命軍が戦争に勝利する。
そして1797年10月、カンポ・フォルミオ条約を締結。

その結果、ナポレオンのフランスはハプスブルク家の領有国、オーストリアネーデルラントをフランスに併呑した。

ネーデルラント連邦共和国も占領、よってオランダ総督のオラニエ公ウィレム5世はイギリスに亡命。
1795年からはナポレオンのフランス傀儡のバタヴィア共和国となった。

1804年12月2日にナポレオンは皇帝となる。

自身が皇帝となると自分の兄弟を侵略した国の国王に就けた。
バタヴィア共和国も1806年からはナポレオンの弟、ルイ・ボナパルトが国王に就任しホラント王国となった。

ちなみにこのルイ・ボナパルトの息子シャルル・ルイが後のナポレオン3世となる。

他にナポレオンの兄ジョゼフ・ボナパルトナポリとスペインの国王に就任。

しかし新興のジョゼフ・ボナパルトにスペイン国民が反発しスペイン独立戦争(または半島戦争とも呼ぶ)が起こりイギリスと戦うことになる。


その頃、日本は鎖国中の江戸幕府
長崎の出島で唯一、オランダとは交流があり、1808年10月フェートン号事件が起こった。

フェートン号事件とはイギリス軍艦がオランダ船を装い長崎港へ不法侵入し、長崎の出島のオランダ人を誘拐、人質にし強奪した威嚇事件。
フランス属国のオランダの海外拠点をフランス領とみなし威嚇しに来た。
イギリス本国では半島戦争でフランスと戦っている最中。

イギリスの敵はフランス、そう、長崎の出島はフランスがオランダを占領中の実はフランスだった。

白石一郎の短編小説に「孤島の騎士」というのがあり、この辺りの長崎の出島のオランダ人を描いている。

 

幻島記 (文春文庫)

幻島記 (文春文庫)

 

 


出島のオランダ人がナポレオンの起こしたヨーロッパの戦乱を、遠く離れた極東の、鎖国政策の江戸幕府に知らせぬまま、狡猾に翻弄した話だ。


翻弄


「孤島の騎士」は短編小説だが、結論から言うと欧州大陸の戦乱、植民地競争にまみれた狡猾なオランダ人に対して安直に翻弄されてしまうだけの鎖国中の島国根性の日本人。
という対比をシニカルに描いている。

長崎の出島にはオランダ人の商館長(カピタン)が居て実在した当時のカピタン、ヘンドリック・ヅーフが主人公。

オランダ商館長(カピタン)のヅーフに翻弄されるのが通訳の役目の通詞の日本人達だ。


白石一郎が初の直木賞の候補になった作品とか。(1970年第63回の直木賞の候補になった)
白石一郎フェートン号事件で自ら進んで切腹し責任をとった松平康英を描いた「切腹」も書いている。

この辺りの史実には更なる逆転現象があり、そこを白石一郎の「孤島の騎士」は上手く描いている。
本当のオランダ国王と言うべきオランダ総督オラニエ公ウィレム5世はイギリスに亡命していてイギリスはフランス領となったオランダの植民地、オランダ領東インドを占領し返していた。

オランダ領東インドは侵略返しでイギリス領東インドとなっていた。


イギリス領東インド会社


イギリス人のトーマス・スタンフォードラッフルズがイギリス領インド会社のジャワ副総監だった。

ラッフルズと言えばシンガポールラッフルズホテルが有名。村上龍の同名小説があるな(笑)。

シンガポール

ラッフルズのジャワ副総監の統治は1811年~1816年の4年半だが、先にマレー半島ペナン島で6年間、勤務していた。
当時、東南アジア独特の病気があり原因や治療法がまだ未開発で、赴任地では多くの人が亡くなり、入植者のイギリス人、原住民に病人がたくさんいた。

江戸幕府初期、秀忠の頃まではイギリスは平戸を拠点に日本と貿易していた。

イギリスは日本は、日本人は清潔、なのを分かっていた。
東南アジアは疫病が大変、清潔な日本の拠点が欲しい。

ラッフルズがイギリス領東インド会社の副総監に就任した時、ナポレオン戦争の混乱にまぎれ、まず長崎の出島もイギリス領にしようと企んだ。


元、オランダ領東インドのオランダ人の意識はフランスの属国のフランス植民地よりは本当のオランダ国王的存在オラニエ公ウィレム5世の亡命先、イギリスのイギリス植民地のがマシだった。


しかし、イギリスとオランダも因縁がある。


16世紀の大航海時代、香辛料を求める東南アジア方面への侵略でヨーロッパ各国がそれぞれ東インド会社を設立する競争があった。
インドネシアポルトガルから始まりオランダがポルトガルを駆逐し、更にイギリスも進出した。
オランダとイギリスでインドネシアの拠点を争った。
そこでオランダ東インド会社の人間がイギリス東インド会社の人間を陰謀で連行し拷問死させインドネシアを独占するアンボイナ事件が起こる。
本国で大問題となりオランダがイギリスに賠償金を支払うことで事態は収拾した。
しかし以降、香辛料の価値が下がりインドネシアはたいした拠点ではなくなりオランダは衰退。むしろインドを重要拠点としたイギリスの勢力が増すこととなる。
17世紀からは英蘭戦争を第四次までやりアメリカ大陸東海岸を争った。ニューヨーク元々はニューネーデルランド、オランダ領だったが敗戦しニューヨークとイギリスの都市名に変わった。
江戸幕府ともイギリスは長崎の平戸で貿易していたのをオランダが江戸幕府
「イギリスはポルトガル王室と婚姻しカトリックだから、布教活動を企む」
と讒言。島原の乱もあり、家光の時代からは海外貿易はオランダ一国、長崎の出島のみとなった。


英蘭の確執や因縁は鎖国の島国、日本には計り知れないものだった。


とは言え、19世紀、ナポレオン戦争中のイギリス領東インド
殆どがイギリス傀儡のがマシとイギリスの言いなりに行動する中、長崎の出島のカピタン、ヅーフだけは英蘭の確執を考慮したか更に上手でフランス領長崎の出島をあえて貫いた。

よって長崎の出島はナポレオン戦争中の数年、本国からの補給が途絶え、カピタンのヅーフは資金繰りに苦労した。

しかし、イギリスに頼ったって、やはりイギリスに獲られる。
ナポレオンか、イギリスか、の違いなだけ。

ナポレオンの侵略を嫌ってのイギリスの傀儡化とは言え、イギリスもオランダの海外拠点をイギリス化しようと企んでいるはず。

イギリスは先のフェートン号事件で、オランダ船を装い威嚇しに来たが、後もオランダ船を装い長崎の出島に来航し、イギリス傀儡のオランダ人の出島商館長に人事交代しようと企んだ。
ヅーフはそうじゃないから、イギリスの言いなりになるオランダ人を使うイギリス人ラッフルズの作戦だ。
白石一郎の「孤島の騎士」はこの辺り、書いてます)


ヅーフが当たりだった。


ナポレオンは1815年6月18日、ワーテルローの戦いに負け、ウィーン会議東インド会社ことインドネシアはイギリスからオランダに戻された。

 

オランダ人ヅーフの粘りがイギリス人ラッフルズに勝った。


白石一郎の「孤島の騎士」に、最後、ヅーフが事態が解決した時、日本人通詞に
「国際情勢は複雑なものです。その点、貴方がた日本人は、何も知らない。赤児のようにね。」
と言い
日本人通詞は、自国を赤児と言われた江戸幕府の無防備さに顔を赤くし恥じた。
という場面がある。

ヨーロッパの混乱に対して、江戸幕府はヨーロッパの事情を知らぬまま、偽装船にも気付かずオランダだと思ったまま、秘密裏に知っても隠蔽したまま、長崎の出島を200年以上、怠慢に許し続けていた。

 

良くも悪くも日本だ。

 

ナポレオンのフランスから次にヨーロッパを席巻した第二次世界大戦ナチス・ドイツ
ナチス・ドイツが侵略した国々、オランダの女王、ベルギーの首相、ノルウェーの国王、フランスのド・ゴール将軍、ポーランドの大統領、チェコスロバキアの大統領らは、やはりイギリスに亡命。
ムソリーニのイタリアに占領されたエチオピアの皇帝もイギリスに亡命した。

しかし、イギリスは第二次世界大戦ではナチス・ドイツと戦い、植民地は日本に占領され疲弊し尽くした。
ノルマンディー上陸作戦はアメリカに頼った。
よってフランスのド・ゴール将軍は戦後、駐留するアメリカ軍からの従属要求の予防を核保有政策で切り抜いた。
ド・ゴールの立ち回りの狡猾さをド・ゴール主義と呼ぶ。かつて長崎の出島は守ったヅーフのようだ。


時は1942年1月11日、日本の陸軍第16軍は蘭印作戦を実行。


鎖国中の江戸時代には長崎の出島で貿易した唯一の国オランダの植民地インドネシア、ジャワ島に侵攻。
かつて140年前は翻弄されるだけの国は欧米より数世紀遅れて侵略国家となった。

遅れてやってみた侵略で、江戸時代には貿易した侵略国家イギリスとオランダを制圧した。
しかし、遅れてやった侵略は、大敗で終わり、軍事裁判で裁かれることになった。
そしてインドネシア統治の日本軍人の多くがオランダに軍事裁判でB級C級戦犯として裁かれ死刑にされた。


大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」でジャワ島捕虜となった連合国イギリス軍、オランダ軍を描いている。

 

戦場のメリークリスマス [DVD]

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占領し統治する日本軍将校ヨノイ役を坂本龍一が演じていた。
この映画のクライマックスの名場面、ナゼかアイシャドーの化粧した坂本龍一デヴィッド・ボウイ演じるイギリス兵捕虜がキスしてしまう。

ヨノイがあるイギリス兵捕虜を斬首しようとする場面、デヴィッド・ボウイ演じるイギリス人捕虜は仲間を守るため

~ヨノイは俺に惚れている、斬首なんて野蛮を止めさせねば、よし、キスしてやろう~

坂本龍一演じるヨノイはショックで倒れる。


はい、腐女子とホモにはたまらない映画です(笑)。


デヴィッド・ボウイ、化粧した坂本龍一と美しい男ワールドの中、ナゼかビートたけしが典型的な日本の軍人の味出しまくりで出演。


ビートたけし演じる日本兵が戦後、戦犯になり収監されている場面。ジャワ占領期には傍若無人でデカイ態度だった野蛮な日本兵が、小さくなって澄んだ目でかつて捕虜で下手に扱ったイギリス兵通訳、ロレンスに

「メリークリスマス、ミスターロレンス」

と、立場逆転で死刑前の最後のご挨拶。


やっぱり日本が翻弄されただけの戦争だったのか。


美しい男ワールドで坂本龍一のこの映画のテーマ曲、「戦場のメリークリスマス」に歌詞が乗るデヴィッド・シルビアンが情感たっぷりに歌い上げる「禁じられた色彩」という曲がある。

 

禁じられた色彩

禁じられた色彩

 

 

デヴィッド・シルビアン、1980年代初期のJAPANってバンドのボーカル。耽美的で幽玄で素晴らしい名曲がたくさんあるが「錻力の太鼓」は特に凄い。

 

錻力の太鼓

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中国共産主義の曲や、イギリスの、日本の侵略の暗喩っぽい曲がある。

他のアルバムにも
大航海時代、アフリカ植民地、東ドイツの曲がある。
クワイエット ライフ」という曲は
ヨーロッパの青年らがゴールドラッシュに沸いた時代を暗喩した感じの曲だ。

 

クワイエット・ライフ

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ヅーフもラッフルズも、ロシアのレザノフも、海外に侵略し一攫千金を狙うゴールドラッシュの先駆けだった。


日本への本格的なゴールドラッシュは1853年7月8日、ペリーの浦賀への黒船来航から。
鎖国江戸幕府もペリーの黒船に、1854年3月31日、
日米和親条約を締結し、とうとう開国。
アメリカは更に外交官ハリスを来航させ1858年に日米修好通商条約も締結。
アメリカと不平等条約を結んで開国したら、俺も俺もとヨーロッパ列強各国が続々と来航し、不平等条約締結のオンパレードとなった。
安政五カ国条約アメリカをはじめオランダ、イギリス、ロシア、フランスとも修好通商条約を締結。
以降もポルトガルプロイセン、スイス、ベルギー、イタリア、デンマーク、スペイン、スウェーデンノルウェーオーストリア=ハンガリー帝国と計15ヶ国と不平等な通商条約を締結した。
そして、うじが湧くようにゴールドラッシュ狙いの欧米人が日本にやって来た。

大量に湧いたウジ虫(ゴールドラッシュ狙いの欧米人)いや、血を吸うヒルらに、不平等条約は、日本の金を数ヶ月で枯渇させた。

金銀比率めちゃくちゃに不平等な交換。
ルールゆるゆる、家族名義、家族ならまだしも、名前変えて同人物が別人になりすまし、何回も何回も比率めちゃくちゃな金銀交換を繰り返してたら


日本の金が、数ヶ月で枯渇した。


あれだけ頑なに鎖国したがこの様。
この不平等条約の打破から鎖国江戸幕府を倒した明治政府は富国強兵に力を入れ、日露戦争第一次世界大戦でヨーロッパに復讐する。
しかし、ヨーロッパより遅れた侵略が世界中から非難され、国連を脱退。
日本も火事場泥棒に資源を求め南下したら、東南アジアを植民地に持つ欧米から反感を買い、逆に対日石油禁輸を喰らった。
よって無謀な第二次世界大戦に無理矢理、突入せざるを得なくなり

大敗する。

敗戦国、日本。今現在やはり、日本は欧米に搾取される翻弄される国、かな(泣)。

あ、カルロス・ゴーンとか