映画「ハンターキラー 潜航せよ」に見る山下奉文と寺内寿一
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内容はアメリカとロシアの原子力潜水艦の衝突から起こる第三次世界大戦の一触即発を回復しようと孤軍奮闘するもの。
今年あった日本映画「空母いぶき」と類似していてなかなか印象的だった。
主人公はジェラルド・バトラー。
役柄は海軍兵学校卒ではない潜水艦の現場一筋、叩き上げの、危険任務を遂行する潜水艦艦長。
もう一人の主演級はゲイリー・オールドマン。
役はアメリカ統合参謀本部議長で大統領付きの軍事顧問。
潜水艦の中の現場ではなく作戦司令室で衛星からの局地的画面を見て状況判断や方針を計画する側。
ゲイリーの役柄は都合が悪くなったら立場利用し部下を叱責する、小物っぷりがはなはだしい上役。
計画が暗転したとたんに部下にとことん責任押し付ける場面があるが、ゲイリーの真骨頂だった(笑)
ゲイリーのこの役が主役のジェラルド・バトラーの
「俺は現場一筋、叩き上げなんだよ」
のベタ過ぎるクサさを(笑)見事に引き立てていた。
アカデミー賞も受賞したし本当に脇からの“曲者”が上手い。
まず、ジェラルド・バトラー演じる海軍兵学校を卒業してない、叩き上げの潜水艦一筋の艦長。
初っぱなはスコットランドの山中で鹿狩りをして遊んでいた。
要するに何か理由があり前線から干され遊んでいた。
この場面のポイントは鹿狩り中だけど、狙っていた雄鹿に家族がいたから手を止めて、射るのをやめた。
この人、思慮配慮ありますよ~、まず善玉を訴える(笑)。
山下がマレー作戦の大戦果を上げながら満州に飛ばされたような。
超有能なのに遊んでます(笑)
しかし、アメリカの原子力潜水艦がロシア海域で行方不明になり、緊急事態の敵海域への詮索を計画、その危機業務をこの叩き上げにやらせるべく、ヘリコプターで鹿狩り中を強制連行。
サイパン島が陥落し絶対国防圏が敵に占領される。東條英機が首相辞任。次に標的となるフィリピンに第14方面軍を改編、最高司令官に山下奉文を任命。敵の最高司令官マッカーサー到来予定の大変危険な現場に呼び戻す。
ジェラルド・バトラー演じる新任艦長、自分が海軍兵学校卒ではなく現場一筋の叩き上げなのを、わざわざ部下に宣言し理解を求める場面がある。←(ここがベタにクサイ)
山下の皇道派、226事件という大逆を起こしたマイナーな派閥とイメージが被る。
ゲイリー・オールドマン演じる統合参謀本部議長は作戦本部でアメリカ大統領(この映画では女性)のご機嫌や様子を伺いながら、女性大統領の感情や回りの助言に簡単に流される方針にただ賛同するだけ。自分の意見はない。(ゲイリーだもの、この小物っぷり妙味上手い、笑)
南方軍総司令官の寺内寿一が台湾沖航空戦の戦果に疑いを持たず、大本営の方針にただ従うだけ。
しかも現場、フィリピンじゃなく好環境のサイゴンの指令部から発令だけする。
あぁ、これ、山下奉文と寺内寿一だわ(笑)
「ハンターキラー」はイギリス映画でジェラルド・バトラーもゲイリー・オールドマンもイギリス人。
原作があるがイギリス資本の映画だからイギリス人の作家か?
内容は潜水艦映画の名作「眼下の敵」を意識した敵将同士、讃え合う要素もある。
イギリスで自国の負け戦の敵将だった”マレーの虎“が名将である評価はあるのか?
あってほしいもんだが、優秀な現場と無能な本部のエリート、とはよくある逆転話で、そう思うと山下奉文と寺内寿一、見事に現実は小説より奇なりだな。
山下奉文はイギリスの軍事作家には当然、知られている人物だろう?
余談だが映画評論家の水野晴郎が昔、「シベリア超特急」という今や伝説のカルト映画で山下奉文の満州赴任時代を主演している。
いや、マレーの虎はジェラルド・バトラーくらいはカッコ良いわ、と思ったね。