イヴ・シャンピ監督「スパイ・ゾルゲ/真珠湾前夜」鑑賞

 

 

京橋の国立映画アーカイブで「スパイ・ゾルゲ/真珠湾前夜」を鑑賞してきた。
DVD未発売で前々から気になってた作品でした。


リヒャルト・ゾルゲ
日本が北進政策をとらず(ソ連には攻めない)、南進政策をとる。
と、モスクワに打電し、スターリンが安心し、ソ満国境置いた30個師団をシベリア鉄道でモスクワへ派兵しナチスの東部戦線崩壊のきっかけをつくった話は有名。

この映画でも1939年のノモンハン事件や1941年の関東軍特殊演習の話が出てきて、ゾルゲが

 

「関特演なんか、目眩ましの基本だ。日本はソ連に攻めるそぶりだけで攻めないね。」

 

と、日本の関特演になんか、騙されないね~、と、有能スパイっぷりをアピールしていた。

更にこの映画のゾルゲは1941年10月の段階で日本は2ヶ月以内に真珠湾奇襲攻撃をやる
と、一流スパイの勘だけで暴走(笑)。

スパイ仲間の打電の名人、クラウゼンにソ連側にその情報を送った、最大の仕事をしたぜ!
の、得意の絶頂のところで、他のコミンテルン仲間の日本画家、宮城与徳特高共産主義狩りで検挙され、ゾルゲがソ連のスパイなのを白状してしまい、ゾルゲらソ連のスパイは逮捕される。

 

しかし、果たしてゾルゲは日本で処刑されたのか?

 

と、謎を残して終わり。

 

ポイントが

ゾルゲが日本で処刑された?

いや、実は捕虜交換でソ連に帰国していたかも?

な、ゾルゲの生死の謎で終わった。

 


この映画のゾルゲの日本人の彼女はカフェのウェイトレス石井花子ではなく、男爵夫人の桜井優希(ゆき)で岸惠子が演じていた。

当時のシャンピ監督夫人で、出だしの男爵夫人役、岸惠子は気品溢れる和服美人で、痩身で和服を見事に着こなす細面のキツネ顔は肉感的な白人女優より美しかった。

 


真珠湾奇襲攻撃の情報提供は007のジェームズ・ボンドのモデルになったイギリスとナチスの二重スパイ、ドゥシャン・ポポヴも有名。
ポポヴはドイツのスパイに成り済まし、ドイツ滞在中に同盟国、日本が真珠湾を攻める可能性があることを察知、FBIのフーバー長官に報告したが、ポポヴの派手な私生活を良く思わないフーバー長官は、この情報を信用せず上のルーズヴェルト大統領には上げなかったらしい。
真珠湾奇襲攻撃は山本五十六の気まぐれで、当初の計画ではフィリピンに攻める予定を直前で急変した唐突なものだったが。

ポポヴの真珠湾情報も、真偽、いろいろ説がある。

 

まあ、どのみちルーズヴェルト大統領は

 

日本から奇襲で戦争仕掛けてきた

 

という、いちゃもんが欲しかった訳でゾルゲもポポヴもそこは余計な仕事だったか。

 


あと、日本にもユダヤ人迫害を迫った、ポーランドでのホロコーストを派手にやったゲシュタポ上がりのマイジンガー駐日ドイツ大使館付警察武官が出ていたが、ゾルゲをドイツの有力新聞社、フランクフルター・ツァイトゥングの特派員だと信じ込んで顧問にする位、信用していた。

そんな信頼するゾルゲを怪しんでドイツ大使館にまで執拗に捜索に入る日本の防諜部長の大佐に対し


「我々、ゲルマン民族は世界最高の民族だ。
小汚ない劣等民族め。」

 

と、発言する場面はサスガ、ホロコーストの達人(苦笑)。

マイジンガーは終始、劣等民族の国、日本赴任が嫌嫌で、ゾルゲにも

 

何とかして私を本国に帰すよう出来ないか?

 

と、頼るセリフがあった。

けど、マイジンガーは終戦迄、日本に駐在で、終戦直後は河口湖畔の富士ビューホテルに疎開中、連合軍に検挙され、ポーランドワルシャワで裁判にかけられホロコーストの罪で絞首刑となった。

 

 

日本側も、オイゲン・オット駐日ドイツ全権大使が近衛文麿首相と松岡洋右外務大臣に対して

 

近々、ソ連に攻めるから挟撃で日本もソ連に攻めて欲しい

と、懇願するも


近衛文麿首相が

考えとくわ


と、素っ気ない返事する場面もありました(笑)。

オット駐日全権大使も、ゾルゲをすっかり信用してしまい、ゾルゲに独ソ戦開始の情報が伝わり、2日前にはゾルゲがソ連側に、ナチスが2日後に侵攻する打電をしていた。

 


ドイツ側から頼まれた独ソ戦の挟撃、または北アフリカ戦線とインド洋で挟撃でも良かったんだけど、駐日ドイツ人らも見事に騙したゾルゲらコミンテルンの暗躍が見事だった訳か(笑)。